Page 3-2 : ゼーベック効果について

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【 ゼーベック効果について 】
ゼーベック効果(Seebeck effect): 物体の温度差が電圧に直接変換される現象で、 熱電効果の一種である。逆に電圧を温度差に変換する現象を [ペルチェ効果] という。

ゼーベック効果はエストニアの物理学者、トーマス・ゼーベックによって、1821年、偶然発見された。ゼーベックは金属棒の内部に温度勾配があるとき、両端間に電圧が発生することに気づいた。また、2種類の金属からなるループの接点に温度差を設けると、近くに置いた方位磁針の針が振れることも発見した。これは2種類の金属が温度差に対して異なる反応をしたため、ループに電流が流れ、磁場を発生させたためである。

ゼーベック効果は2つの効果、荷電粒子の拡散およびフォノンドラッグによって起こる。

[荷電粒子の拡散]
物質中の帯電したキャリア(例えば金属中の電子、半導体中の電子と正孔、イオン導体中のイオン)は、導体の一端が異なる温度のとき、その端へ拡散しようとする。熱い端にいる熱いキャリアは、冷たい端のほうへ拡散する。なぜならそこでは熱いキャリアの密度が薄いからだ。同様に、冷たいキャリアは、熱い端のほうへと拡散する。帯電したキャリアの動きが電流である。

導体の両端がそれぞれ一定の温度に保たれていれば、キャリアは一定の割合で拡散する。もし熱いキャリアと冷たいキャリアが等しく拡散するならば、電荷の正味の移動はゼロである。しかし拡散する電荷は、物質中の不純物、欠陥、そして格子振動(フォノン)によって散乱を受ける。 散乱がエネルギーに依存するならば、温度の異なるキャリアは異なる割合で拡散することになる。このため一方の端でキャリアの密度が高くなり、プラスとマイナスに帯電した両端の間には電位差が生じる。

[フォノン・ドラッグ]
フォノン(phonon, 音子、音響量子、音量子とも言い、振動を量子化したもの)は、温度勾配があるとそれに従って運動する。その間に電子や他のキャリアとの相互作用、および格子欠陥の影響で運動量を失う。もしフォノン−電子相互作用が優勢ならば、フォノンは電子を物体の端から端まで押し動かしながら、その過程で運動量を失っていく。この過程は、すでにある熱電場をさらに強めるように働く。フォノン・ドラッグの寄与は、フォノン−電子散乱が顕著となる温度領域で重要になる。■
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』