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【 カルマン渦 】
一様な流れの中に物体 (例えば円柱) をおいたときに下流側に交互にできる渦をカルマン渦列という。1911年にテオドール・フォン・カルマンが初めて理論的に解明した。
カルマン渦ができるには条件がある。円柱の大きさ、流体の密度、粘性そして流れの速さによって、円柱の下流側にできる流れには違いが現れる。その流れの違いは、レイノルズ数 Re=Ud/ν (円柱の直径 d,、流体の動粘度 ν、流速 U )によって分けることができる。
円柱の大きさ、流体の動粘度を一定にして、流れの速さだけを変えた場合、円柱の下流の流れが遅いうちは、双子渦が形成され、レイノルズ数50〜60を境にしてカルマン渦へと変化、そしてさらに流れが速くなると乱流へと変化していく。カルマン渦が発生する周期は、流体の流れが速いほど短くなり、渦と渦の間隔は速さによらず、円柱の直径の約5〜6倍になる。
渦流量計は、配管内にカルマン渦を発生させる渦発生体(ブラッフボディ)と渦を検出するセンサおよびアンプから成りたち、カルマン渦の発生する周期(周波数)を求めて流速を測定する。
自然界で「風に吹かれて旗がはためく」 「風で電線がうなる」 「小川の杭にかかった水草がゆれる」 などは、このカルマン渦のせいで起こる。「墨流し」の技法(バットに牛乳を薄めて入れ、墨汁を含ませた筆をその中に入れてまっすぐに動かすと、後ろに渦模様が出来る)で出来る渦は、カルマン渦列である。筆の動かす速度を変えると渦模様のできかたが違ってくる。ラーメンを食べた後、スープに直角に割りばしを一本立て、そのまま手前に引 けばきれいな渦列をつくることもできる。
カルマン渦が発生すると、物体の左右で渦が交互に発生するために物体が振動する。ワシントン州タコマ市にナローズ橋というつり橋がかかっている。 これは、初代の橋が1940年に崩壊した後、1951年に新たに建設されたものである。 この1940年の崩壊は、風の渦との共振によるものと考えられている。この場合、橋が円柱の役割をしてカルマン渦ができた、と思われる。
カルマン渦による振動は円柱形の物体だけでなく、自動車、船、飛行機など高速で動く物に伴って発生、横揺れの振動を引き起こし、騒音や金属疲労の原因となっている。円柱の周りにらせん状の物を取り付ければ、渦のでき方が不規則になり、振動はなくなる。■