令和7年度日本大学学術研究助成金[独創的・先駆的研究]
廃炉に向けて―原子炉建屋コンクリート強度と構造の関係と処理水のトリチウム除去

廃炉に向けてー

原子炉建屋コンクリート強度と
構造の関係と処理水のトリチウム除去

化学と建築・土木が融合した最先端研究で
廃炉の巨大な壁に挑む

研究概要 Research Summary

福島第一原発の廃炉作業において、世間の注目は「燃料デブリ」の回収に集まっていますが、実際には建屋そのものと汚染水という、より巨大な課題が控えています。

物理的な量で言えば、最も大きな負担となるのは原子炉建屋のコンクリートです。事故時の高温や、冷却のために長期間水にさらされた影響で、コンクリートの強度は著しく低下していると予想されます。さらに、放射性物質が内部深くまで染み込んでいるため、これらを安全に解体・処分するのは極めて困難な作業となります。

一方、溶けた燃料を冷やし続けることで発生する汚染水も深刻です。多核種除去設備(ALPS)を使えば大部分の放射性物質を取り除けますが、トリチウム(3H)を含んだ水(トリチウム水)だけは現在の技術で分離することができません。そのため、基準値以下まで薄めた処理水を海洋放出しているのが現状です。

そこで、本研究では、原子炉建屋の解体をスムーズに行うために、廃棄されるコンクリートのうち、放射性核種を含んだものだけ少なくし、放射性廃棄物を原料することを目標に、次の課題に挑戦します。

研究課題 Research Project

  • 01

    コンクリートが高温に晒されたとき、どのような構造変化を起こすか、その強度を測定する

    研究の狙い

    建屋のどの構造がもろくなっているのかを突き止め、解体作業をより安全かつスピーディーに進めることができるようになります。

  • 02

    コンクリートにFPはどのような化学形で存在し、コンクリートのどのあたりまで浸潤しているか調べる。また、それが流出しないようにする高分子膜の開発を行う

    研究の狙い

    セシウムなどの物質がコンクリートのどの部分に、どのような形で付着するかを解明し、汚れた部分だけを効率よく取り除き、ゴミ(放射性廃棄物)の量を劇的に減らすことを目指します。

  • 03

    処理水からトリチウムを含む水を分離する方法を検討し、廃炉への道を開拓するものである

    研究の狙い

    水の中から効率よくトリチウムを分離する技術を開発し、環境への影響を最小限に抑えます。

現在の放射性トリチウムを含んでいる処理水からなるべくトリチウムを除くことにより、環境に放出される放射性核種の量を押させることも期待できます。この研究目標を達成するために下図のような体制で研究を行います。

研究目標と研究体制 Goals & System

研究目標と研究体制 研究目標と研究体制

日本大学の工学部と生産工学部の化学系の教員を中心として、土木、建築の研究者で構成されていることが大きな特色です。特に、コンクリート工学と構造計算の研究者との協力体制を確立していることで、ミクロな分子構造の知見をマクロな構造体に応用することができ、廃炉だけでなく今後のコンクリート構造物の強度に対して重要な知見を与えるなど、様々な発展的研究につながることが期待できます。

コンクリート工学
ミクロな分子レベルで、放射性物質が強度にどう影響するかという新分野の開拓。
廃棄物学
放射性物質をコンクリートの中に封じ込め、安全に処分する新しいリサイクル・処理モデル。
地域貢献
福島にある工学部が中心となり、現場に密着した解決策を提示。