ターゲティング分子をクリック反応で付加した核酸送達ポリマーの開発


近年,癌や遺伝子疾患はどの治療を目的として核酸医薬が注目されており,核酸を目的細胞に送達する技術はますます重要になってきている。我々は,このようなキャリアーとして安全性が高く食品添加物などにも用いられているポリシロキサンに注目した。ポリシロキサンを主鎖とする四級イミダゾリウム塩はカチオン性であり,核酸のキャリアーとして有用であると考えられる。さらに,癌細胞などに薬剤を選択的に送達するためには,細胞表面の標的分子に特異的に結合する分子を薬剤キャリアーに連結する必要がある。クリック反応は,生理的条件下で効率よく進行し,極めて特異的であるため,その連結法として適している。そこで,代表的なクリック反応であるアルキンとアジドのフイスゲン反応による連結を行うために,アルキンを導入したポリシロキサン四級イミダゾリウム塩誘導体PImを合成している(図1)。

脳腫瘍のうちでも特に悪性度が高いグリオーマには効果的な治療法がなく,その開発が求められている。グリオーマに核酸医薬などを特異的に送達することは,その手段のひとつとして期待されている。そこで,グリオーマ細胞表面に発現している上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合するペプチドをPImに付加し,グリオーマ細胞特異的遺伝子送達を行った。その結果,ペプチドを付加した場合は付加していない場合に比べてグリオーマ細胞にDNAが約500倍多く取り込まれた(図1)。

図1 ターゲティング分子を付加したカチオン性ポリシロキサンポリマーによるグリオーマ細胞へのDNA導入

[発表論文]

Kihara et al., Polym. J., 46, 175-183 (2014).

Kihara et al., J. Nanosci. Nanotech., 17, 5081-5089 (2017).

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