新着情報

2022年7月 アメリカ物理協会誌(AIP)に論文投稿

2022年1月 化学と工業 Vol.75、No.1 「支部だより」 奥山執筆

2021年12月 Journal of Computer Chemistry, JapanVol. 20, No. 4, pp.129 (2021) に論文掲載  著者 長沼、石橋、奥山

2021年12月 第64回学術研究報告会 令和3年度 関、長沼、奥山 口頭発表

2021年12月 第64回学術研究報告会 令和3年度 長沼、関、奥山 口頭発表

2021年11月 長沼、石橋、奥山 日本コンピュータ化学会秋季大会2021 口頭発表

2021年10月 令和3年度化学系学協会東北大会が日本大学工学部で開催 奥山、大会実行委員長として実施

2021年10月 令和3年度化学系学協会東北大会 特別企画 奥山 口頭発表

2021年10月 令和3年度化学系学協会東北大会 長沼、奥山 ポスター発表

2021年10月 令和3年度化学系学協会東北大会 関、奥山 ポスター発表

2021年9月 分子科学討論会2021 長沼、石橋、奥山 口頭発表

2021年9月 分子科学討論会2021 関、奥山 ポスター発表

2021年9月 分子科学討論会2021 長沼、奥山 ポスター発表

2021年4月 日本化学会 東北支部 奥山 副支部長就任

2020年12月 第63回学術研究報告会 令和2年度 大塚、奥山 口頭発表

2020年12月 第63回学術研究報告会 令和2年度 石橋、奥山 口頭発表

2020年9月 令和2年度化学系学協会東北大会 関、石橋、大塚、奥山 ポスター発表

2020年9月 令和2年度化学系学協会東北大会 長沼、大塚、石橋、奥山 ポスター発表

 

 

 


光物理化学研究室
教授 奥山 克彦

okuyama.katsuhiko@nihon-u.ac.jp
66号館 204号室:教授室、205号室:実験室

 イメージしていただきたい。宇宙空間にひとつの分子が漂っているところを。分子どうしの衝突はなく、ほとんど熱も(分子内振動)ない。まわりからの影響もなく、その分子が裸の自分をさらけ出している状態。

 こんな状態は、わたし達、分子分光学を生業にしている者にとって、理想的な状態なのです。まわりからの影響を受けないその分子だけの情報が得られるからです。このような状態を実験室に ‘一瞬’ 作りだし、光を使ってその分子を観察する、それがこの研究室です。

 光の振動数は、原子や分子を語ります。それが発光であれ吸収であれ、原子や分子から作られたものです。わたし達のはなしは分子に限ります。その光が、どのような分子から作られ、その分子のどのような状態からどのような状態への光であるか定めることは、分子分光学の大切な使命のひとつです。その理由を箇条書きにします。


(1) 天空に向けて電波望遠鏡を向けたり、宇宙船に望遠鏡を載せて星空を観測したりすると、いろいろな色(振動数)の光がみえます。その光がわたし達が実験室で観測した光と同じならば、その分子がその星にあることになります。
(2) 地球上でのはなしです。どのような分子が集まっているか分からない物質があったとします。それに別の光を当てると、いくつかの色(振動数)の光を吸収するか発光するかします。その色(振動数)の組み合わせが、わたし達が実験室で観測したものと一致すると、どのような分子がどのような割合で入っているかわかります。
(3) 次は少し大きな話をします。現在は実現できていませんが、‘わたしの夢’でもあります。ロハスやSDGSにもかかわる話です。長くなります。

 「試験管の中ではなくて、コンピュータの中に正確な分子を作りたい」のです。化学はわたし達人類の生活を画期的に便利にしました。しかし、その一方、二酸化炭素をはじめ地球温暖化ガスを大量に作り出し、気候変動の根本原因を作りました。自然界を汚し公害も作りました。奇形児を産む薬害の原因にもなりました。化学は分子の使い方を間違えると、わたし達の生活を脅かします。わたし達人類は、「分子の裏の顔までわからずに、利便性だけを追求し利用してきた」のです。このようなこと、将来はやめましょう。試験管の中に分子を作る前に、コンピュータの中に正確な分子を作りましょう。それが自然界に放出されたとき、どのような影響があるか、表も裏も調べあげましょう。人体の中に入ったとき、どのような影響があるか、調べ上げましょう。コンピュータですべてシミュレーションするのです。それに合格してから、試験管の中で分子を作りましょう。コンピュータのハードはもうじきそれが可能になるレベルまで発達すると思います。問題はソフトです。そのためのプログラムの構築です。正確な分子をコンピュータの中に作るためには、複雑な環境(溶液や結晶のような)に置かれた分子を調べるのではなく、‘裸の分子’の情報が必要なのです。

これらが、分子分光学という研究の使命です。工学部にいるからこそ、その必要性は高まります。わたし達は、上に描いた状態の分子を一瞬作り出し、強いレーザー光を当て、分子から出てくる、本当に微弱な光や分子のかけらを観察しています。だから、‘光の雑音’の少なく、電圧の安定する夜の方が良いデータが得られます。夜な夜な活動し、昼は寝ている変な研究室です。

 皆さんは、ヒット曲はお好きですか、わたしは好きです。心にささるフレーズ、記憶に残るメロディー。ヒットするには何か理由があります。一度、ヒットすると飽きられることはあるかもしれませんが、その曲は未来永劫残ります。わたし達の仕事も似ています。時間は少し長くかかりますが、世界中の様々な研究者に興味をもってもらい、‘おもしろい‘と思ってもらえる仕事。そんな論文を書くことです。最もおもしろい研究をするとノーベル賞がもらえます。

 次は自画自賛です。わたしが書いた論文がふたつ、高い被論文引用件数(Citation)を記録しています。被論文引用件数とはおもしろい論文として、自分の論文の参考にした件数です。ふたつとも現在、200件を超えています。わたし達の領域では当時、500件を超えるとノーベル賞の候補になります。今でも、そんなはかない夢を追いかけて被論文引用件数の高い論文がかけるよう仕事をしています(これら論文に興味がある方は、後ほど記しておきます)。