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研究内容

研究内容


研究内容

「光エネルギー変換反応系の反応メカニズムを解明して、新しい反応系を提案する」

研究の立場

エネルギー問題の解決は、人類にとってとても大きな課題です。石油、石炭、天然ガスなどの化石エネルギーに頼らない再生可能エネルギーの開発が待ち望まれています。究極的には光エネルギーをエネルギーとして利用する“人工光合成技術”が必要とされ、世界中で研究が進められていますが、現状では実用化までは遠い道のりです。しかし、これから数十年の間に実用化する必要があり、それを目指して研究が進められています。
 人工光合成の実現に向けて、多くの研究者によって、様々な取り組みが行われています。我々は反応物理化学の立場から人工光合成の研究に関わっています。

研究の方向

最先端光エネルギー変換反応系のメカニズムを解明して、効率の向上を目指すための指針を与える研究を、世界最先端の反応系・材料を研究しているグループとの共同研究で行い、我々独自の計測手法で反応メカニズムの解明を進めています。対象としては、“色素増感太陽電池”、“有機薄膜太陽電池”、“光触媒”があります。これらのデバイスは、光照射によって生成する電子と正孔(陽イオン)の反応が重要なので、それらを分光学的に検出し、反応効率や反応速度を定量的に決定し、材料機能の特徴を明らかにすることで新しい材料設計の指針を与える方向へ研究を進めています。

現在すすめている研究課題

・色素増感太陽電池の電荷分離初期過程

・色素増感太陽電池の劣化反応解析

・酸化チタン光触媒材料の反応・物性相関

・新規光触媒材料の電荷分離・再結合過程

・有機薄膜太陽電池材料の新しい構成法の検討

・有機結晶中の励起子反応の計測

・発光材料の評価方法の高度化


・有機材料の精製と単結晶成長

 計測原理:
過渡吸収測定

光反応系に瞬間的に光パルスを入射させて、光化学反応を瞬間的に起こす。そして生成する反応中間体や生成物の光吸収の時間変化から、反応収率、反応速度を求める方法が過渡吸収分光です(実験化学講座第5版 物質の構造T 分光上)。 これまで、超高感度化、波長の拡大、空間分解能の付与について過渡吸収分光法の装置の改良をすすめてきました。
 現在、三つの計測システムが稼働中です。ひとつは可視-近赤外波長領域の超高感度過渡吸収分光装置です。時間分解能50 nsと速くはありませんが、非常に感度が高い特別な装置です。二つ目は最近開発したRIPT法を用いた過渡吸収分光装置です。サブナノ秒からサブミリ秒までシームレスに測定できる画期的な装置です。三つめは、マイクロ波(9 GHz帯)の吸収を測定する特徴ある装置です。三つの装置の特徴を下記に示します。


超高感度可視-近赤外過渡吸収分光装置:

 励起光源にパルス幅10 nsQスイッチYAGレーザーを用い、プローブ光源にキセノンランプを用いた過渡吸収システム。測定時間分解能は50 ns程度であり、100 ms程度まで計測可能です。0.00001の吸光度まで計測できる超高感度システムであることが特徴となります。測定波長範囲は400 nmから1600 nmまでで、溶液、フィルム試料に対応可能です。

RIPT法を用いた高速過渡吸収測定装置:

 励起光源にパルス幅250 nsのレーザーを用い、プローブ光源にスーパーコンティニュウム光源を用いた過渡吸収システム。計測方法に特徴があり、RIPT法と名付けた手法によってこれまで計測が非常に困難であった110 nsの領域の計測を実現しました。また、1 msまでシームレスに計測が可能です。測定波長範囲は0.00001の吸光度まで計測できる超高感度システムであることが特徴となります。測定波長範囲は400 nmから1600 nmまで、励起波長は266, 355, 532 nmから選ぶことができます。

時間分解マイクロ波光電導度測定装置:

 励起光源:パルス幅10 nsQスイッチYAGレーザー
マイクロ波:Xバンド(9 GHz)100 mW(ガンダイオード)
マイクロ波のAC電場により、光によって生成した電荷キャリアによる吸収を測定する装置です。信号強度は電導度、つまり移動度とキャリア密度の積に比例するので、非接触で電気伝導度を計測可能となり、粉状試料などでも測定できる特徴があります。光エネルギー変換材料の電荷生成量、キャリア易動度の評価を行っています。

新しい太陽電池として注目されている色素増感太陽電池。この動作機構について反応素過程を 過渡吸収をはじめとする分光計測技術を利用して解明をすすめています。特に励起色素 から酸化チタンへの電子注入効率の定量評価を可能にして、様々な条件での電子注入効率を評価しています。
 酸化チタンをはじめとする光触媒材料では、光吸収によって生成する電子と正孔が反応に寄与します。これらの再結合速度を評価し、反応を追跡する研究を過渡吸収分光法によって進めています。 再結合速度は励起光強度に大きく依存するため、極めて弱い励起光強度での計測が必要になります。 そのため、通常の装置での計測は非常に困難で、開発した超高感度過渡吸収分光計が非常に役に立ちます。

計測原理:
  蛍光測定

 光で励起された分子はある寿命を持って、基底状態に戻ってきます。その際、発光(蛍光)を伴うことがあり、蛍光のスペクトル(放出される光の波長)、寿命(時間挙動)、収率(吸収光子数に対する放出光子数)を測定することで、励起状態の様々な挙動を調べることができます。
 我々の研究室ではこれらの3つの計測が可能です。蛍光スペクトルは蛍光分光光度計で計測することができます。蛍光寿命についてはパルスレーザーを用いた蛍光寿命測定装置(特徴は下記参照)を用いて50 psの時間分解能で計測ができます。蛍光収率については蛍光収率計を所有していて、それによって定量的な評価が可能です。


蛍光寿命測定装置:

励起光源:チタンサファイアレーザー(パルス幅100 fs、波長:400 nm,266 nm)、半導体レーザー(パルス幅100 ps、波長:370 nm

 蛍光寿命を計測する装置。計測手法は二つあり、@ストリークカメラ法(観測波長領域300-800 nm、時間分解能50 ps程度)とA時間相関単一光子計数法、です。ストリークカメラ法はスペクトルの時間変化を測ることができるメリットがありますが、若干感度が低いため、微弱光の場合はAの装置が有用です。



装置



   研究室全体


 RIPT法による
 過渡吸収測定装置


高感度過渡吸収 (過渡拡散反射)測定装置


時間分解マイクロ波光伝導(TRMC)測定装置


時間相関単一光子計数法による蛍光寿命測定


 ストリークカメラ


 ナノ秒蛍光寿命
 測定装置


 チタン‐サファイヤ
 レーザー


   YAGレーザー1


   YAGレーザー2


レーザーダイオード


   吸収分光計


  高感度可視吸収
  分光装置


  蛍光量子収率計


   蛍光分光計


  顕微蛍光装置


    FT-IR


  真空・大気圧
   昇華装置


   真空ライン


  ゾーン精製装置


    HPLC


  スピンコーター


スクリーンプリンター


    電気炉


   真空蒸着器


   マイクロ天秤


   真空紫外分光計


  高分解能分光器


    顕微鏡


ソーラーシュミレータ1


ソーラーシュミレータ2


    電磁石